不埒な先生のいびつな溺愛
「謝んな。どこでなにを選ぼうが、俺は今の職に収まってた。作家ってのは自分の欲求不満をぶちまけりゃ金が入ってくるんだからな」
先生の冷静な言葉に少し救われた。
本当は、先生のように、思いの丈をぶちまければそれが評価される、そんな才能のある作家さんはなかなかいない。先生が作家になってくれて良かった。私は心の底から安心した。
「期待してます、久遠先生」
先生の十二年間はどんなものだったのだろう。
このときは想像すらしていなかった。先生がその十二年間を、どんな気持ちで過ごしてきたのか。
私は、この十二年間、一度も連絡をとらなかったのだとしても、今までずっと心のどこかで、『久遠くん』を忘れることはできなかった。