不埒な先生のいびつな溺愛
「先生の考えることには驚かされます」

私は作品の真相について、これ以上は詳しく聞こうと思っていない。先生の考えは、最後まで分からないからこそ、この作品を解読する価値があると思うのだ。

すると先生は真顔に戻った。

私が作品についての話を切り上げたことは先生も感じ取り、紅茶を飲むことに移行していた。

それを見てから、私は鞄に原稿をしまった。

「そういえば先生って、どこで結婚相手を探してらっしゃるんですか?」

「……なんで、んなこと聞くんだよ」

「だって気になるじゃないですか」

先生はこの話題を少しだけ嫌がる。

「別に、俺に来いってうるせぇパーティーとかに行ってるだけだ」

「え!? それって婚活パーティーってやつですか?どんな雰囲気ですか?」

「顔が同じ女が群がってくる」

婚活パーティーなんかに久遠先生がいれば、そんな事態になっているだろうことは容易に想像できた。

先生がお持ち帰りしてくる女性の雰囲気から考えれば、普通の婚活パーティーではなく、業界パーティー寄りの派手なものだろう。

女性を連れ込んだ先生の部屋に漂うものと同じ、そこはブランド物の香水の香りにまみれているはずだ。

「あの……男性側の方たちはどんな感じですか?」

「ハ?」

「ですから、パーティーって、私も行ってみたら素敵な男性と出会えますかね?」

先生は私のこの質問に、なぜか十秒ほど停止していた。
< 25 / 139 >

この作品をシェア

pagetop