不埒な先生のいびつな溺愛
「横スクロールしていって。誰がいいかな〜?」

渡された携帯ごと受け取った。

戸惑いもあったが、私はそこに映し出される男性を指先で選び始めた。編集長はそれに合わせて、ルーレットを回すときの変な歌を歌っている。

先生に「生身の女じゃない」となじられたあの日、私はネイルサロンに行って、指先をキレイなベイビーピンクに塗りたくってもらっていた。

その女性らしく変身した指先を自分自身で堪能するように、チョン、チョン、と何度も画面をタップした。

編集長の携帯の画面に次々に現れる写真は、ほとんどが飲み会の写真だった。業界人のパーティーが多い。

どの人も同じ系統の顔をしているが、総じてレベルが高かった。
普段、先生の顔のせいでイケメンは見慣れてしまっているが、彼らは先生とは全く系統が違う。これはこれで、感動的なほど、惹かれるものがある。

そこでおそらく慕っている編集長と記念に写真を撮ったと思われる若い男性たちは、編集長とのツーショットに皆ご満悦の表情をしていた。

彼らを見ているだけで、若返った気分になる。

そうだ普通、男性はこういう笑顔を見せるものだ。

機嫌が悪いばかりで扱いの難しい先生と長くいたから麻痺していた。

「素敵な人ばかりですね」

「だろ?僕のイチオシばっかりだからね。皆実力ある編集さんだよ。誰でも紹介できるけど、どうする?」
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