不埒な先生のいびつな溺愛
ここに写っている人たちは皆、私と同じ編集で、辛いことも楽しいことも経験して、うちの編集長とつながっている。私と共通点の多い人ばかりだ。

私は先生のことを思い出していた。久遠先生の方が異質だ。

久遠先生はまず、こんな笑顔は人に見せないし、見せられない。閉じこもりがちで編集長のように人脈も広げられないし、そして編集長のような人と繋がるという、この男性たちのようなガッツもない。

絡めとるのは女性ばかりで、それだって先生自身が「つまらない」となじるような女性ばかりだ。

そんな先生に認められなかったから何だって言うのだ。先生にとって生身の女でなくたって、私とリアルで繋がってくれる人はたくさんいる。

先生とわざわざ、狭い部屋で狭い談義を交わさなくても、私には広い世界が広がっていた。

ピンクの爪で彼らを選びながら、嘘みたいに自信が湧いてきた。

「あ、編集長。この方、私見たことあります」

スクロールを止めた。

「ああ!“伏見くん”ね。如月文庫の編集の人だよ。いやあ彼はすっごい良い人だよ〜?それに秋原さんと話してみたいって言ってたし」

「え?伏見さんも私のこと、ご存知なんですか?」

「パーティーで秋原さんも会ってたはずだよ。挨拶くらいはしてるんじゃないかな?よし決めた。伏見くんと会ってみなよ。絶対気に入るから」
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