不埒な先生のいびつな溺愛

この最初のデートの次には映画デートをし、それから三度目のお家デートの間に、仕事で一度だけ久遠先生の家を訪ねなければならなかった。

どんなに酷いことを言う先生相手でも、編集として一緒に仕事をしなければならない。

前回家に来たとき、先生の言葉にショックを受け、部屋から逃げてしまうという出来事があったばかりだが、私はそのときのことなど全く気にはならないほど、伏見さんとのデートに元気づけられていた。

それに次の予定はお家デート。男性と“そういうコト”をすることは久しぶりだ。

私には楽しみな予定があるのだから、編集として先生と仕事をするくらい何でもない。

手っ取り早く機嫌を取るため、先生の家に行くときにはまたモンブランを買っていった。

「お邪魔します。先生、調子どうですか?」

ドアを開けた先生は、眉をひそめた。

私が何も気にしていない顔をしているから、彼もさすがに驚いていた。

先生は子供だ。

私にとって先生は仕事相手なのだから、気分を害したからといっていつまでもヘソを曲げているわけはないのに。

微妙な空気を醸し出そうとする先生には触れず、頼まれて用意していた資料を渡し、ケーキを出すためにキッチンを借りた。

今のところ女性の痕跡は見つけられない。

でも、そんなものを探す気も、もうなかった。先生は先生で、自分なりに結婚相手を探しているのだから、そのやり方にケチをつけることはない。

どう考えても、先生のしていることは近道ではないと思うけれど、先生はこの件に関して私の助言など聞き入れないのだから仕方がなかった。

私は私で自由にやればいい。先生のことなど、知らない。
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