不埒な先生のいびつな溺愛
リビングにティーセットを用意した。先生は戸惑いながら、それに手をつけ始めた。

さっきから顔色を探るような視線を送ってくるが、私は構わず、仕事の話をすることにした。

「先生。来月は新人賞の受賞パーティーがありますが、スーツのご用意は大丈夫ですか?」

社内で印刷してきたパーティーの要領を、テーブルの上に広げた。

昨年、先生自身が受賞した新人賞からもう一年が経ち、今回の新人賞にはまた新しい作家が選出されていた。

業界のパーティーが大嫌いな先生も、前年の受賞者として今回はドレスコードで出席しなければならなかった。

先生は露骨に嫌な顔をした。

最近は婚活のためにパーティーに行っているのというのなら、少しはあの雰囲気に慣れてくれたかと思ったのだが、どうやらそうでもないらしい。

パーティーがあるといつも、私はその間、久遠先生に付きっきりとなる。今回もそうなりそうだ。

もちろん担当する他の先生方に挨拶はするが、苦手な社交場で所在のない久遠先生が、いつも私の側を陣取ってしまうからだ。

先生は昔から、誰かと世間話をすることを嫌がり、私を立たせてその後ろに隠れてしまうのだ。

「ああ」

「当日は会場まで一緒に行きましょう。迎えに来ますからね」

「いい。来るな」

「そういうわけにはいきませんよ。先生、一度ドタキャンしたことあるじゃないですか。見張ってろって編集長がうるさいんです」
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