不埒な先生のいびつな溺愛
私は伏見さんにこんなことを話して、何がしたいのだろう。

これではまるで先生に対して未練があるようで、これから恋人になりたいと思っている相手に話すようなことではない。

私のことを何とも思っていない、今ではまともに意思の疎通すらできなくなってしまった難解な先生のために、伏見さんのような非の打ち所のない人を手放してしまうなんて、馬鹿げている。

「ふうん。秋原さんのことを何とも思っていない、というのは、今のその彼には恋人がいるということですか?結婚している、とか」

ズキン、と胸が重く痛んだ。

「……そう、ですね。結婚相手を探して、何人も、付き合っては別れてを繰り返しています」

「あはは、そりゃ結婚相手を探している人の取る行動じゃないですね。大丈夫、それは遊びだから秋原さんにもチャンスはありますよ」

いつの間にか、私は伏見さんに熱心に相談をしてしまっていて、そして同時に、おそらく伏見さんにフラれている。

「いえ、チャンスとかじゃないんです。きちんと言葉でも言われていますから。私のことは、生身の女だと思えないって。……べつに、今さらその人とどうなりたいとか思っていないので、いいんですけど」

「ずいぶん、詩的なことを言われましたね。ロマンチックだなあ」

「……ロマンチック?どこがですか?」
< 50 / 139 >

この作品をシェア

pagetop