不埒な先生のいびつな溺愛

自己嫌悪の中、伏見さんのマンションから帰宅した。
駅まで送ってくれたものの、もちろん次回会う約束などはしなかった。

先生の話をすることで、伏見さんを批判したつもりはなかった。そもそも“幻”というのは褒め言葉で言ったわけじゃない。

私は手を開いて、それを街中のイルミネーションにかざしてみた。

彩られた爪の根元から、裸のままの爪が伸びていた。気付かなかった。もう塗り直さなければならないのに、ちっともそんな気持ちにならない。

やっぱり、こんなものは落として、もうネイルサロンにいくのはやめよう。
同じことの繰り返しだ。

きっと伏見さん以外の人を探してまた出掛けても、気分が落ちてしまう。そうして出会っては別れ、出会っては別れを繰り返しては意味がない。

それではまるで、先生がしていることと変わらない。

「……じゃあどうしたらいいの、先生……」

目の前に広がるイルミネーションに向かって、そう呟いたときだった。

──ピリリリ ピリリリ。電話が鳴った。

画面を見ると、【久遠先生】の文字が写し出されている。

冷えていた体は一気に熱くなり、ドキドキと胸が鳴り出した。だってタイムリーすぎる。先生のことばかり考えていたところに、こんな。

それに先生から私に電話をすることなんて、滅多にないはずなのに。

───ピリリリ ピリリリ ピッ

「は、はいもしもし!秋原です!」
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