不埒な先生のいびつな溺愛
……勘違いしてはだめだ。
先生に甘えた視線を向けられながら、私は必死に、自分を律していた。
先生は私のことなんて、何とも思っていない。
女性を平気で部屋に連れ込んで、それを私に隠そうともしないのが何よりの証拠だ。
今だけ見せられているものに流されちゃいけない。そもそも、これは私が担当編集だから、こうやって甘えているだけなのかもしれないし。
「……も、もういいでしょう?先生。十分整いましたよ?」
それでも先生は甘ったるい表情を変えようとはしない。
「美和子……」
次は手を掴まれた。先程まで先生の前髪を撫でていた手だった。
後退りをした私のヒールが、カツンと音を立てた。
いつもと違う。会場に来る前、先生の部屋でネクタイを締めたときも、電話が来なければこんな雰囲気になっていたのだろうか。
でも先生は、私相手に、どうしてこんなことをするの?
「先生……?」
力は入れられていないのに、掴まれた手はビリビリとした刺激を感じていた。
───気持ちいい。
手と手が触れているだけなのに、先生とは一生、触れ合うことはできないと思っていたから、余計にこの感覚が愛しく感じた。
「美和子、俺っ……」
「あー!秋原さん!久遠先生!無事に会場入りしてたんだね!」
私でも先生でもない声が、私たちを呼んだ。
木島編集長だった。
私の後ろからやってきた彼からは、おそらく私たちの手が繋がれていることは見えなかったはずだ。
それでも私たちはまたそこで、慌ててその手を離した。
「編集長!お疲れさまです」
「いいねえ秋原さん!ドレス似合う似合う!」
先生に甘えた視線を向けられながら、私は必死に、自分を律していた。
先生は私のことなんて、何とも思っていない。
女性を平気で部屋に連れ込んで、それを私に隠そうともしないのが何よりの証拠だ。
今だけ見せられているものに流されちゃいけない。そもそも、これは私が担当編集だから、こうやって甘えているだけなのかもしれないし。
「……も、もういいでしょう?先生。十分整いましたよ?」
それでも先生は甘ったるい表情を変えようとはしない。
「美和子……」
次は手を掴まれた。先程まで先生の前髪を撫でていた手だった。
後退りをした私のヒールが、カツンと音を立てた。
いつもと違う。会場に来る前、先生の部屋でネクタイを締めたときも、電話が来なければこんな雰囲気になっていたのだろうか。
でも先生は、私相手に、どうしてこんなことをするの?
「先生……?」
力は入れられていないのに、掴まれた手はビリビリとした刺激を感じていた。
───気持ちいい。
手と手が触れているだけなのに、先生とは一生、触れ合うことはできないと思っていたから、余計にこの感覚が愛しく感じた。
「美和子、俺っ……」
「あー!秋原さん!久遠先生!無事に会場入りしてたんだね!」
私でも先生でもない声が、私たちを呼んだ。
木島編集長だった。
私の後ろからやってきた彼からは、おそらく私たちの手が繋がれていることは見えなかったはずだ。
それでも私たちはまたそこで、慌ててその手を離した。
「編集長!お疲れさまです」
「いいねえ秋原さん!ドレス似合う似合う!」