不埒な先生のいびつな溺愛
「じゃあ、僕はもう行くね。あ、二人でパーティー抜け出したりしちゃだめだよ!」

編集長は満足したようで、私たちの輪から抜けていき、私と伏見さん、そして久遠先生が残されてしまった。

行くなら伏見さんも連れてってくれたら良かったのに、木島さんのせいで伏見さんはこの場を去るタイミングを見失ってしまった。

それは伏見さんも思っていたようで、また彼は私に目配せをして苦笑いをした。
その間、久遠先生はひと言も言葉を発しない。

「あー、じゃあ、俺も行きますね。仕事だけど、秋原さんにお会いできてラッキーでした」

「あ、ええ、そうですね。私もです」

「それではまた。久遠先生も、新作楽しみにしていますので」

先生はまた、何も答えなかった。

伏見さんも離れて行ったことで、また私と先生は二人だけになった。
すぐ隣にいるので、顔を上げれば先生がどんな顔をしているのか分かるのに、私は先生の顔を見るのが怖かった。

何か喋って、先生。

「……お前」

先生は吐息のように消えそうな声を出した。

「お前、あの男と付き合ってんのか」

「えっ」

先生の質問に背筋が凍った。一体どうしてそんなことを聞くの?私はまた、何か責められるの?
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