不埒な先生のいびつな溺愛
トイレの扉がひやりと冷たくなった気がした。

「先生?どうしてそんなこと……あの、私、何かしてしまいましたか?」

どんなに先生と言い合いになろうと、担当をやめろなんて言われたことはなかった。だからこそ先生が本気で言っていると分かったのだ。

先生がこんなに苦しんでいるのは、私のせいなの……?

「ねえ、先生!答えて下さい!」

夢中で扉にしがみついて先生を呼ぶと、先生は今まで押さえ込んでいたドロドロとしたものを全て吐き出すように、嗚咽の混じった声を絞り出した。

「もうたくさんだっ……もう、俺は、お前に振り回されるのには、耐えられねぇんだよっ!」

頭が真っ白になるというのはこういうことだ。

振り回されていたのは私の方だと言い返す選択肢すら思い付かないほど、私は何も考えられなかった。

先生に初めて拒絶された。理不尽でも、話が通じないことがあっても、それでも先生は私を拒絶したことはなかったのに、先生は今回ははっきりと私を拒絶していた。

ずっとそう思ってたの?
私がそばにいるのが耐えられないって。

「せ、んせ……」

今の私は先生の何でもない。恋人でもなければ、友人でも、家族でもない。ただの仕事相手だ。

でも私は先生のそばにいることが好きだ。

先生は違ったの?
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