不埒な先生のいびつな溺愛
こんなときでも、電話だ。

───ピリリリ ピリリリ ピリリリ ピリリリ

ここで出るべきか迷ったが、私は今は一応仕事中であることを思い出し、出ることにした。

電話は会社からだった。

「はい、秋原です」

『あ、梨本ですー。パーティーお疲れ様です。久遠先生はご一緒ですか?』

会社に待機している後輩の梨本さんだった。いつもの調子だが、少し早口だ。

「え?……まあ、はい、一緒にいますが」

『久遠先生の携帯つながらないんで秋原さんにおかけしました。申し訳ないですが代わってもらえますか?』

「いやぁ、今はちょっと……」

『えーっと、じゃあご伝言お願いできますか?白木山病院というところから、久遠先生と連絡がとりたいと電話がきました。大至急だそうです』

「……白木山病院?」

そのとき、個室のドアが開いた。
いとも簡単に先生が出てきた。

先生が出てきたことにも驚いたが、私は電話を聞き取ることにも集中した。

『はい。病院からも久遠先生に何度も連絡を入れているようですが携帯の電源入ってないみたいで、会社のほうに電話したみたいですよ。お伝えください』

「は、はい」

先生は呆然と私を見ていた。

「……会社からでした。白木山病院が、先生と連絡をとりたいそうで、折り返すように、と」

用件を伝えると、久遠先生は全てを悟った表情で、自分の携帯電話の電源を入れた。
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