不埒な先生のいびつな溺愛
私の言ったことで、先生の機嫌が少し悪くなってしまった。
先生との会話は、ときどきこうして行き違いとなる。
私が全く気づかないまま、一方的に先生を怒らせ続け、そして私もそれに困惑し続けるのだ。
「……フン、そんなヘマしねーよ」
機嫌の悪くなった先生はそう言い捨てた。
連れ込んだ女性と私が鉢合わせになることは、やっぱり彼にとっても“ヘマ”なのか。
てっきり先生はそんなことは気にしないと思ったのだけれど、気にしているなら感心である。
「あっそうですか」
私も徐々に機嫌が悪くなったことで、ふたりの間には微妙な空気が流れていた。
「なんでお前が怒るんだよ美和子。俺の編集だろうがお前は」
「もう、こんなときだけ編集って言うんですから」
「……ただ、さっきのは俺も迂闊だった」
「さっきの?……さっきのって何でしたっけ?」
「腐ったケーキだ」
はあ?と。意味が分からずしばらく考え込んだ。
くわえて、先生が何故にそんなに悔しそうに顔を歪めているのかも分からない。
謎だ。
腐ったケーキの後始末をさせたこと?そんなこと迷惑のうちに入らない。
先生は、こちらがもっと真剣に困るような迷惑を、常にかけてくるんだから。
「美和子が来るのに、ああいうものを置いたままにする気はなかった。悪かった」
えぇ?