不埒な先生のいびつな溺愛
「先生……すみません」
坂部さんの少し大きめのファミリーカーに、先生は運転席、私は助手席に乗り込んだ。
会場からここまで三十分ほどかかったから、私の家まではさらに遠く四十分はかかる計算になる。
時計を見ると夜の十時を過ぎていた。
車を発進させたが、先生は何か別のことを考えている。
先生が何も話す気になれないのなら、無理にこちらから話しかける必要はないと思い、私も黙っていた。
しかし数分すると、先生の方が先に口を開いた。
「なあ、今日、俺は美和子に色々と言っただろ。それでもお前は、ここまで俺について来た。……嫌にならないのかよ」
前を向いたまま、運転中だから当たり前だが、私は先生の横顔を見ていたが、先生は私を見なかった。
「こんなことになって、先生を放っておけるわけないですよ。それは何を言われようと一緒です。……でも、今日先生に言われたことは、たしかにショックでした」
「……美和子」
「でも今はいいんです」
先生の実家から十分ほど離れると、すぐに都会の景色に戻った。
行きのタクシーの中では私も先生も放心状態だったから、ここまでの景色など覚えてはいなかった。
ここらへんの土地勘は私にはないが、先生の家、会社、病院、そして先生の実家の位置関係は分かってきた。
先生が今住んでいるマンションは、お父さんが入院していた病院と、会社に近く、立地がいい。だからきっとあそこに引っ越してきたのかもしれない。
だとすると、私が知らない間に、先生はいつもお父さんのところへ通っていたのかもしれない。
坂部さんの少し大きめのファミリーカーに、先生は運転席、私は助手席に乗り込んだ。
会場からここまで三十分ほどかかったから、私の家まではさらに遠く四十分はかかる計算になる。
時計を見ると夜の十時を過ぎていた。
車を発進させたが、先生は何か別のことを考えている。
先生が何も話す気になれないのなら、無理にこちらから話しかける必要はないと思い、私も黙っていた。
しかし数分すると、先生の方が先に口を開いた。
「なあ、今日、俺は美和子に色々と言っただろ。それでもお前は、ここまで俺について来た。……嫌にならないのかよ」
前を向いたまま、運転中だから当たり前だが、私は先生の横顔を見ていたが、先生は私を見なかった。
「こんなことになって、先生を放っておけるわけないですよ。それは何を言われようと一緒です。……でも、今日先生に言われたことは、たしかにショックでした」
「……美和子」
「でも今はいいんです」
先生の実家から十分ほど離れると、すぐに都会の景色に戻った。
行きのタクシーの中では私も先生も放心状態だったから、ここまでの景色など覚えてはいなかった。
ここらへんの土地勘は私にはないが、先生の家、会社、病院、そして先生の実家の位置関係は分かってきた。
先生が今住んでいるマンションは、お父さんが入院していた病院と、会社に近く、立地がいい。だからきっとあそこに引っ越してきたのかもしれない。
だとすると、私が知らない間に、先生はいつもお父さんのところへ通っていたのかもしれない。