ハツカレ、ハツカノ。


騒がしい花火会場の待ち合わせ場所で、立ち止まってしまった私と気づかってくれている彩加。
その背後から、久しぶりに聞く声が聞こえた。

「宇野!」

宇野というのは彩加の苗字で、呼んだ声はもともと低かった声が声変わりでさらに低くなった小林だ。

「すぐ見つかって助かった。悪いんだけどさ白井、宇野ちょっと借りていい?」

彩加が怪訝な顔をしている横で、申し訳なさそうな表情の中に、察しろとでも言いたげなアイコンタクトを混ぜてくる小林にため息が出た。

私が彩加を誘ったときは、まだ高校の知り合いにも誘われていないといっていたから、
同じ高校なのに、花火も誘えなかったらしい。

でも、中学の時は散々世話になった恩があるしなぁ。


「戻ってくる時、氷のレモンよろしく。彩加、私この辺にいるからちょっとつきあってやんなよ」
「え?でも、」

彩加の肩を叩くと、気遣わしげな顔をされる。
小林はというと、弾かれたような笑顔だ。

「悪い、ちょっと借りる」

小林が彩加を連れて人混みの中に混ざって行く。

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