ハツカレ、ハツカノ。

少し外れた待ち合わせ場所だった駅の脇の公衆電話の横で座り込んで待つことする。
こうやって観察していると、浴衣まで着て来て1人で待ちぼうけはなかなかみじめな気持ちになった。

「あ、ねえねえ、ひとり?」

彩加が連れて行かれてから10分もせずに現れた祭で勢い付いたナンパにうんざりとしてくる。

「まにあってまーす」

そう言えばたいていは他の所へ行ったけれど、面倒くさいのは団体でふざけている奴より個人で狙ってくる奴だ。
本気で今日の遊び相手を探しているようなやつ。

「いやいや、さっきからナンパ断ってばっかだけどさ、実際ナンパ待ちでしょ?」
「友達待ってるんで」

次から次へと本当に面倒くさい。
普段はナンパなんかほっとんどされないのに!

仕方ないので移動しようと立ち上がって逃げようとしたところで、腕をつかまれた。

「あのっ、」
いらついて振りほどこうとした所で、掴まれた腕が先ほどのチャラい手じゃないことに気付くと目の前に壁がたちはだかった。

「すみません、連れなので」
「は?なんだよ」

不機嫌な声の後に舌打ちをしてナンパはあっさりと去って行って、私の腕も同時に自由になる。

「さ、きぐち?」
「さっきから何してんの?」
「彩香と、小林待って、る」

驚いて、聞かれたことに答えるのが精一杯な返事になってしまった。
だって、図書委員のこと以外での会話なんかどれくらいぶりだろう。

ちなみに、最後の会話は「アンケート用紙おねがいします」「はい」だ。

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