ハツカレ、ハツカノ。

どうしていいか分からずに本を持ち直すと、半分ほど持って行かれる。
そして棚の方に歩いて行って、配架の作業を手伝い始めた。

「え、別にいいよ」
「あー・・・いやさ、ちょっと話したいから、手伝いながらいい?」

嫌な予感しかしない、静かで気まずそうな話し方。

こんなこと、あの頃言われてたら真っ先にドキっとするシチュエーションなのに。
いや、ある意味すごくドキドキだけど。

「あん時さ、なんで、やめようっつったの?」

咄嗟に言葉が出なくて、かわりにものすごく間抜けな顔をしてしまった。

いま、何ていった?

「いや、なんか、今なら割と冷静に聞けそうっていうか」

心を読んだかのようにそう言った崎口に、私はどうしていいか分からなくなる。

「…今更?」
「今だから」

思わず呟いた言葉に、語気を強めにして返される。

今、だから?なんだろう。

今、彼女が出来て落ち着いてみて、昔のことが気になったっていうこと?


< 17 / 25 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop