ハツカレ、ハツカノ。
正直、どうしていいか分からない。
正解にたどり着ける気がしない。

だから、素直に答えることにした。


「…テスト勉強に、身が入らなかったから」
「は?」

正直な気持ちだった。

スマホを買ってもらえるか瀬戸際の大事な期末テストだったのに全然身が入らなかった。
もらったばかりの電話番号とアドレスを書いた手帳と、もらったメモを何度も見返した。

心臓がバクバクして、胸だかお腹だか背中だかから這い上がるソワソワとした気持ちがこそばゆくて、勉強はひとつも身に入ってこない。

そんな状況に、耐え切れなかった。

「おはようって言っただけで冷やかされるし、勉強は手につかなくなるし、崎口も楽しくなさそうだし、良いことないなあって思ったから」
「それだけ?」
「それだけって、…あの頃はそれで十分いっぱいっぱいだったんだって」

私が俯くと、崎口の足元が見える。
固まってしまった空気に困っていると、崎口が息を呑んだのがわかった。

「嫌いになったとか、そういうんじゃないの?」
「…え?」

びっくりして顔を上げると、驚いているのは崎口も同じだった。

「いや、嫌いにはなってないけど、なに?それ」
「いや、急にやめるとか言うから、やっぱり好きじゃなかったとか、からかってたのかと」
「…そんな罰ゲームじゃないんだから。そんなことしないよ」
「いや、まあ、小林とかにもそれは言われたけど」

小林、フォローありがとう。
遅ればせながら心の中でお礼を言う。

でも、そんな風に思われていたのか。
いや、思われても仕方がないか、あれじゃ。


「人からかうために告白とか、そんなタチ悪いこと考えないよ、普通。だから、大丈夫だって」
「…大丈夫って?」
「いや、なんか、あれでしょ?彼女と付き合うのに、あの時のことを清算しときたかったとか、そんな感じでしょ?別に、崎口悪くないよ。私の問題」

好きすぎてどうしていいかわからなかった。
初めての恋に戸惑った私のせい。

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