ハツカレ、ハツカノ。
「…なんか、花火の時もだったけど、もしかして勘違いしてない」

そう言われて、思わず首を傾ぐ。

「俺、彼女とかいないし、誰とも付き合う気ないけど」
「へ?あの、花火の時の子は?」

告白されて一緒に花火を見てたんだから、それは付き合う気満々でしょう?

思わず怪訝な顔をすると、崎口は気まずそうに首の後ろを掻いた。

「…そこまで知ってて、あれか」
「なに?」
「断った」

はい?
理解が追いつかなくて、もうわけが分からない。

「断ったけど、同じバスケ部だし、周りが冷やかして2人で買出し行けっておいやられたんだよ」

そのノリは知っている。ていうか、ものすごく身の覚えがある。

「あ、あぁー…そういう」

思わずそんな反応をしてしまう。

あれ、じゃあ、この状況ってなんだろう。
彼女と付き合うための清算とかじゃなければ、なんだろう。

"今だから"気になる、私の本心って、なに?

「…嫌いになったとか、そういうんかと思ってた」
「いや、それはない。私の問題」

むしろその逆だったとか、さすがにいえないけど。

「ごめん。もっと早く言えばよかったよね。崎口、なんか女子不信みたいになってたでしょ」
「いや、そんなことないと思うけど」
「嘘だよー、なんか極力接しないようにって感じ出てたし」
「まあ、だって、嫌いな相手とはあんまり話したくないかなって思ってたから」

ドスっと、背中から刺された気分だった。

そりゃ、普通に考えて目が合わないのは嫌われてるからですよね。
私に対して限定だよ、そりゃ。

「でも、なんだ、嫌われたんじゃなかったのか…」

落ち込んでいると、どこかほっとした声が頭上から聞こえて思わず顔を上げる。
なんだか少し、さっきよりすっきりしたような顔で、崎口が私を見下ろしている。

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