ハツカレ、ハツカノ。
「白井、俺さ、うそついたわ」
「え?」
「誰とも付き合う気ないって行ったけど、それは嘘だった」

なんだろう。
この、浮き沈みの激しい会話は。

いっそのこと埋めてくれればいいのにと思うほど落ちたかと思うと、たまにふっと引き上げられる。
そしてまた、突き落とされる。

「俺、今でも白井のこと好きなんだけど」

これは、一体なんの罠だろう。

真っ白になった頭で考える。
好き?今でも?誰が、誰を?

いや、もう少し待て。

今にきっと、反語的に、突き落とす言葉が落ちてくるはずだから。


「…さすがになんか反応しろって」


思わず顔をあげると、ほんのり照れたような、困ったような崎口の顔がある。

その顔は、バレンタインにチョコを渡したときの、あの時のそれに似てる。

「え、え、待って、ええええええ?」

大きな声でわかり易く動揺した私に、崎口も驚いて目を開いた・

「え、ええ?なんで!?」

わけがわからなかった。
だって、あんなフリかたをしたのに。
あんな別れ方をしたのに。
あんな態度を取ったのに。

なにがどうなったら、そうなるの。

「あん時は、俺あんまり女子に興味とか無かったし、話すの白井くらいだったか気付かなかったんだけどさ。よく考えたら、話したいって自分から思ったのって、白井だけなんだよ」

あの頃、ただ漠然と、両思いなんだと思った。
ただそれだけだったのに、今は、崎口の口から理由がつむがれる。

2年以上ほったらかしにされていた、投げっぱなしにしていはずの恋を、崎口もまだ持っていてくれたなんて。

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