ハツカレ、ハツカノ。
1.花火の日のこと
― 2年半後

「白井!なんかアンケートさっき預かったんだけどー!」

高校生になると、男子がどんどんと身長を追い抜いて行く。
同じ中学出身でほとんど目線が変わらなかった人達から見下ろされると、なんだか時間の経過を感じる。

高校でも同じクラスになり、図書委員になったこの田口君もそのうちの1人だ。

「ありがとー。何組?」
「1組。崎口に階段であってさ。やっぱり渡しにくかったんだろーなー。俺が通り掛かったらもう、まじ感謝!って感じで引き止められた」

こうもはっきりと笑われると、いっそのこと清々しくて一緒に笑ってしまう。

大体成績が同じだったし、うちの地元で高校なんて限られている。
同じ高校に進学した崎口は、向こうが1組、私が6組の生徒という関係だ。

「よりとかもどさねえの?」
「そういう田口君は彼女と仲良さそうだったね、日曜日」

偶然駅で見かけただけだけれど、同じ学校の恋愛事情はなんとなく把握しておくものだ。

「まじで!?なんで!」
「じゃあ、今週当番だから昼休みと放課後忘れずに来てね」

待って、とかなんとか言っている田口君を置き去りに、もらったアンケートを持って図書室に向かう。
昼休みのいまのうちに、できるだけ集計してしまおう。

図書室まで行くときに、さっき田口君が駆け下りてきた3階からの階段を見上げる。
1組から5組までは上の階で、階数が違うだけで随分と接点が減るものだ。

崎口とは、高校でたまたま同じ図書委員になった。

図書室が好きな私が立候補でなったのは違い、
崎口は田口君と同じようにくじ引きで適当に決められたらしい。

うっかり学年代表なんかやっているものだから、たまに最低限の事務連絡がある。

まあ、大体が今みたいに間に代理をたてられておわるけれど。


中学の頃。

私たちの噂は一時期こそ騒がれたけれど、すっかり風化した。
たまにこうやってからかわれても、今ではあまり恥ずかしくも気まずくも無くなった。


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