弱虫リフレクション【短編】


「へ?」

「成田(なりた)だよ、成田」

「なんで……」

「だってお前、成田に気があんだろ」


……う。


「ほら、お前いっつも地味な格好ばっかじゃねーか。こんな機会滅多にねぇぜ」

「……塚く」


違う。


「恥ずかしがんなって。なんなら、俺がついてってやろーか?」


違う、違う……!


「……っ」


息を呑んだその瞬間、目の前に広がっていたのは最悪の光景だった。


俺の大好きな瞳には、大粒の涙が溢れてて。

俺の大好きな白い肌は、悲しいまでに真っ赤に染まっていた。


「っ、みな……」


この場から飛び出した背中に、咄嗟に手が伸びる。

けれどそれは、すぐに内へ引っ込んだ。

< 7 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop