弱虫リフレクション【短編】
「成田……? アンタ何言ってんの」
栗原さんが、俺の肩を掴んで言った。
見上げると、驚いたような、信じられないといったような目がそこにはあった。
「ああ、そいつは……」
成田──成田翔一(なりたしょういち)は、俺と南都と同じクラスの男だ。
バスケ部のエースで、スポーツをやらせればピカイチ。
対する勉強には無縁の典型的なスポーツ馬鹿だが、明るい性格からクラスのムードメーカーを務めている。
俺も、そんな奴とよくつるんでは、二人してバカやってたりする。
所謂、親友ってもんで。
そのせいか、俺はいつしか知りたくもないある事実に気づいてしまったんだ。
彼女の──南都の真っ直ぐな目が、いつも、眩しい笑顔のアイツに向いてるってことに。
「……南都の好きな奴、かな」
目線を地面にやってから、俺は小さく呟くように返した。