踏みだして、いつか【短編】
……実際、無理して明るく振る舞うことにはもう慣れた。
だからたぶん、少なからずこうやってみんなで楽しく過ごせているんだと思う。
七瀬と、岳と……そして彩芽と。
このメンバーと過ごす日々は、ほんの小さなものだけれど“幸”に溢れている。
だけど。
そうであるからこそ、時に、どうしようもなく苦しくなるんだ。
堪らなく居心地が良くて、些細な幸福感を感じるあの一時と、胸にぽっかり穴が開いたような、激しく苦痛なあの感覚。
それが複雑に絡み合って、いつ爆発してもおかしくないくらい、僕の脳を酷く蝕んでいくんだ。
「いただきまーす」
そして僕は一口、カレーとともにその気持ちを喉の奥へ強引に押し流した。