交際の条件
それから数日後、俺は久しぶりに法人事業部を訪ねた。


倉田奈緒は自分の席で帰り支度をしているところだった。



「倉田さん?」


俺が声をかけると、彼女は少し驚いた様子でこちらの方を見たが、すぐに視線を下に落とした。



なるほど。確かに目を合わせようとはしない子だ。



「第一営業部の稲垣といいます」


「・・・」


「今日は、もう仕事終わり?」


「ええ」


「一緒に帰りませんか?」


「え?」


突然のことで彼女は動揺していた。
< 16 / 53 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop