交際の条件
「この前は、飲み会に参加できなくて残念だったよ」
エレベーターを待つ間、俺は先日の飲み会の話題を彼女にふった。
すると彼女は、俺が澤田有希の同僚で、飲み会を依頼した男だということに気づいたらしく ホットした表情を見せた。
その様子から、一気に警戒心が解けたことがわかった。
「飲み会、盛り上がった?」
「楽しかったです」
「お酒 好きなの?」
「みんなで飲むの、好きです」
会社の玄関を出るまで世間話をしたが、その間も彼女は俺の顔を見ようとはしなかった。
照れている、というわけではなさそうだ。
むしろ、顔は絶対に見ない。という強い意志さえ感じる。
こんな子は初めてだ。
目で口説き落とすことが多い俺にとって、確かに手ごわい相手だった。