交際の条件
数日後、俺は倉田奈緒を食事に誘った。
二人だけでの食事だったから気まずい雰囲気になるかと思ったが、今日の彼女は いつもと違っていた。
店に入ったときから俺の顔を見ながら話をしたのだ。
いままで目を合わせることが無かっただけに、彼女の大きな瞳と視線が合うたびに 俺は柄にもなく照れた。
いままで経験したことのない感覚だった。
「どうして私のこと誘ったんですか?」
食後のワインを飲んでいると、彼女がそう聞いてきた。
「君に興味があるからさ」
「興味?」
「君みたいな子が、どうして誰とも付き合わないのか・・・。不思議に思うのも当然だろ?」
彼女はワイングラスを じっと見つめた。
しばらく沈黙が続いたあと 彼女は小さな声で、
「無理だから」と、ひと言つぶやいた。