交際の条件
以前、広瀬と互いの恋愛観について話したことがあった。


広瀬は無類の楽天家だ。

駄目になるもは仕方が無い。駄目になったら、そのとき考えればいいじゃないかというのが彼の信条だった。


確かにそうかもしれない。


物事は、いつも自分の思うようになるとは限らない。


失敗したら、そのとき考えればいい。


そう開き直ってはみるのだが、どうしても一歩が踏み出せない。


ドライな関係ばかりを繰り返しているうちに、そういう恋愛しかできない体質になっていたのだ。


虚しさだけが去来した。


女を抱くことだけでは埋めることができない心の穴。


求めていたものは、心のつながりだった。


理由は違っても、俺と倉田奈緒はよく似ていた。



壁を破りたい。



その思いは日増しに強くなっていった。
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