交際の条件
「この前、偶然、稲垣さんをお見かけしましてね」

石黒は木製のベンチに腰掛けながら、そう言った。


「俺を?」


「ええ。ヒルズの前で」


最近ヒルズへ行ったのは・・・倉田奈緒との食事の時だ。


「それがどうかしたのか?」


「ちょっと感想を聞きたいなぁと思って」


「感想?」


「奈緒の感想ですよ」


石黒はチラリと俺の顔を見た。



彼女のことを『奈緒』と言った。


どういう関係だ?


俺は少しだけ石黒のことを警戒した。



「倉田君を知ってるのか?」



「ええ。アイツとは同期なもんで」



「感想もなにも、俺は彼女のことを何も知らないがね」


「その割には結構親密そうに見えましたよ・・・」


「何が言いたい?」
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