交際の条件
映画を見終えたあと、ホテルのバーで酒を飲んだ。

いつもなら、このあと部屋へ直行するのだが、今夜はその予約をする必要もない。


ま、こういうデートも たまには いいかもしれないな。



「もう、誘ってもらえないと思ってました」

奈緒がグラスの氷を揺らしながら言った。


「どうして?」


「だって、こんな女 面白くないし」


俺が首を横に振ると、奈緒はハニカんだ。


「たまには こういう付き合いもいいものさ」


「・・・カラダ抜きの?」


「フフ。そうだな」


「稲垣さんは、物足りないんじゃないですか?」


「どうかな。カラダだけの関係の方が何か物足りない気がするよ」


「本当?」


「人って、やっぱり心で つながっていたいと思うのが自然だろ?」


「うん。つながりたい」


「大丈夫。幸せになれるさ」



俺が幸せにするよ。



「えへ。なんか稲垣さん、お兄さんみたい」


「ええ? お兄さん?」


「あ、ごめんなさい。・・・なんか、お兄さんみたいな優しさだから」


「兄弟いるの?」


「いえ。一人っ子です」


「ふーん」


「カクテル、・・・お代わりしてもいいですか? すごく美味しい」


「もちろん」



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