交際の条件
目を閉じて眠ったまま、奈緒が泣いていた。


「奈緒?」


俺は背広の内ポケットからハンカチを取り出し、流れる涙をそっと拭った。


すると、瞳を閉じたまま彼女がつぶやいた。



「アキラ・・・」



俺はハッとした。



奈緒はアキラという男の夢をみていた。



真っ先に、あの男の顔が浮かんだ。


金髪姿の男


デザイナーの石黒晶



別れた今でも、奈緒は石黒のことを想っていたのだ。



脚の力が一気に抜け、崩れるように俺はソファに腰を落とした。

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