ほろ苦いブラウニーと部長の余裕
ほろ苦いブラウニーと部長の余裕
どうしてこうも上手く出来ないものか──･･･

今年のバレンタインこそは部長に告白しようと手作りチョコ、ガトーショコラ等の試作をしているけれど、どれも満足した仕上がりの物が一つもない。

料理は愛情と言うけれど、不味いものは不味いし人様にあげられるものではない。

当日、特別美味しい訳ではないが唯一まともなブラウニーを可愛らしくラッピングしてバッグに忍ばせた。

会社付近の駅前にあるパティスリーはバレンタイン当日ともあって、いつもより早い時間から営業していた。

通りかかり、ふと思う。

やっぱり、買った物の方が良かったかな？

「ここで会うなんて、奇遇だな」

パティスリーで購入し、外に出た時に聞き覚えのある声が横から聞こえた。

チョコをあげようとしていた部長で、ふと目が合った。

部長はパティスリーの紙袋を見ては何かを言いたそうだ。

「おはようございます。今日も寒いですね」

ラッピングのリボンが若干見えている紙袋を背中に隠し、何気ない会話で気を反らそうとする。
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