ほろ苦いブラウニーと部長の余裕
「…そうだな」

いつも口数が少なく、切れ長の瞳のせいか、見かけは冷徹に見える彼だが、本当は不器用なだけでたまに見せる微笑みは格別だ。

「…誰かにあげるの?」

「え、これは…その…」

無表情なまま、小さい声で問いかける彼の目線は、やっぱり後ろの紙袋だった。

「…こっちは?」

財布を押し込んだだけでチャックをしていないバッグから、箱の包みが見えていた様で勝手に取り出される。

「ちょ、それ、美味しくないと思うから返して下さい!」

「…ちょっと苦いけど美味しい」

「こっちをあげようと思ってたのに…」

彼は勝手に包みを開けて、歩きながら味見をする。

焦げて少しほろ苦いブラウニー。

「…そっちは後から二人で食べよう」

「…え?何ですか?」

小さい声で呟くから、上手く聞き取れない。

「聞こえなくてもいいけど、俺以外の誰にも渡すな、って事」

「わ、渡すわけないです!コレもソレもあげるつもりだったんですから!」

私は彼の目の前にパティスリーの紙袋を差し出す。

彼は嘲笑うかの様な微笑みを返し、「じゃあお前ごと受け取ってやるよ」と言った。

たまに見せる大人の余裕が憎らしい。

私の頬が赤く染まり言葉を発せず俯いていると・・・耳元で「好きだよ」と言われて更に赤みを増した。

◆END◆
< 2 / 2 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:7

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

表紙を見る
失恋したら、別の幸せが待っていました!~憧れの部長と溺愛婚

総文字数/31,383

恋愛(オフィスラブ)50ページ

表紙を見る
"密"な契約は"蜜"な束縛へと変化する

総文字数/32,106

恋愛(ラブコメ)53ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop