ほろ苦いブラウニーと部長の余裕
「…そうだな」
いつも口数が少なく、切れ長の瞳のせいか、見かけは冷徹に見える彼だが、本当は不器用なだけでたまに見せる微笑みは格別だ。
「…誰かにあげるの?」
「え、これは…その…」
無表情なまま、小さい声で問いかける彼の目線は、やっぱり後ろの紙袋だった。
「…こっちは?」
財布を押し込んだだけでチャックをしていないバッグから、箱の包みが見えていた様で勝手に取り出される。
「ちょ、それ、美味しくないと思うから返して下さい!」
「…ちょっと苦いけど美味しい」
「こっちをあげようと思ってたのに…」
彼は勝手に包みを開けて、歩きながら味見をする。
焦げて少しほろ苦いブラウニー。
「…そっちは後から二人で食べよう」
「…え?何ですか?」
小さい声で呟くから、上手く聞き取れない。
「聞こえなくてもいいけど、俺以外の誰にも渡すな、って事」
「わ、渡すわけないです!コレもソレもあげるつもりだったんですから!」
私は彼の目の前にパティスリーの紙袋を差し出す。
彼は嘲笑うかの様な微笑みを返し、「じゃあお前ごと受け取ってやるよ」と言った。
たまに見せる大人の余裕が憎らしい。
私の頬が赤く染まり言葉を発せず俯いていると・・・耳元で「好きだよ」と言われて更に赤みを増した。
◆END◆
いつも口数が少なく、切れ長の瞳のせいか、見かけは冷徹に見える彼だが、本当は不器用なだけでたまに見せる微笑みは格別だ。
「…誰かにあげるの?」
「え、これは…その…」
無表情なまま、小さい声で問いかける彼の目線は、やっぱり後ろの紙袋だった。
「…こっちは?」
財布を押し込んだだけでチャックをしていないバッグから、箱の包みが見えていた様で勝手に取り出される。
「ちょ、それ、美味しくないと思うから返して下さい!」
「…ちょっと苦いけど美味しい」
「こっちをあげようと思ってたのに…」
彼は勝手に包みを開けて、歩きながら味見をする。
焦げて少しほろ苦いブラウニー。
「…そっちは後から二人で食べよう」
「…え?何ですか?」
小さい声で呟くから、上手く聞き取れない。
「聞こえなくてもいいけど、俺以外の誰にも渡すな、って事」
「わ、渡すわけないです!コレもソレもあげるつもりだったんですから!」
私は彼の目の前にパティスリーの紙袋を差し出す。
彼は嘲笑うかの様な微笑みを返し、「じゃあお前ごと受け取ってやるよ」と言った。
たまに見せる大人の余裕が憎らしい。
私の頬が赤く染まり言葉を発せず俯いていると・・・耳元で「好きだよ」と言われて更に赤みを増した。
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