モノより言葉を
「のぞきとは暇人だな。A社に持ってく資料はできたのか?」
休憩室の自販機でコーヒーを買っていた私の背中に低い声が突き刺さる。
「...資料でしたら課長のデスクに置いてありますのでご確認ください」
可愛くない返しをしてしまう私は、川口菜々子(カワグチナナコ)新倉課長の部下4年目だ。4年間彼を見てきた。彼だけを見てきた。
「では、お先に失礼します」
コーヒーを取り出し軽く頭を下げ課長の前を通りすぎる。と腕を引かれて動けなくなった。彼を見上げると不機嫌そうに、
「お前、俺になんか渡すモンないの?」
そんな質問にびっくりしたけれど私は冷静に
「『モノは受け取らない主義』とお聞きしてましたので」
そう答えると課長は『チッ』と舌打ちし視線をはずした。
もしかして今だったら受けとってもらえる?
「なので、『モノ』ではなく『言葉』を贈りたいのですが」
私はもう一度息を深く吐き、
「私は新倉課長が好きです。私の気持ちを受けとってもらえますか?」
真っ直ぐ課長を見つめると一瞬驚いた顔した課長はすぐにニヤッと笑い
「お前の全部、受け取ってやる」
そう言って私の唇に優しく触れた。
休憩室の自販機でコーヒーを買っていた私の背中に低い声が突き刺さる。
「...資料でしたら課長のデスクに置いてありますのでご確認ください」
可愛くない返しをしてしまう私は、川口菜々子(カワグチナナコ)新倉課長の部下4年目だ。4年間彼を見てきた。彼だけを見てきた。
「では、お先に失礼します」
コーヒーを取り出し軽く頭を下げ課長の前を通りすぎる。と腕を引かれて動けなくなった。彼を見上げると不機嫌そうに、
「お前、俺になんか渡すモンないの?」
そんな質問にびっくりしたけれど私は冷静に
「『モノは受け取らない主義』とお聞きしてましたので」
そう答えると課長は『チッ』と舌打ちし視線をはずした。
もしかして今だったら受けとってもらえる?
「なので、『モノ』ではなく『言葉』を贈りたいのですが」
私はもう一度息を深く吐き、
「私は新倉課長が好きです。私の気持ちを受けとってもらえますか?」
真っ直ぐ課長を見つめると一瞬驚いた顔した課長はすぐにニヤッと笑い
「お前の全部、受け取ってやる」
そう言って私の唇に優しく触れた。