わたしのキャラメル王子様
いよいよ悠君パパの会社の倒産がリアルとして迫ってきた。これからもうひとつのバイトに向かうんだったりして。
ガテン系のバイトしてたりして!
だからいつもあんなにお腹すかしてるんだ。



「沙羅んとこに早く帰ってきたいから今日もがんばろっと!」



「悠君……」



「あれ。どーした?」



悠君ていつもふわふわしてるから、苦労してるふうにぜんっぜん見えないんだもん。
そんなに生活が大変だったなんて、きっと誰も気づいてないよ。



「何も知らなくてごめんね。明日からおかず一品増やすからっ!」



「ほんとに?めっちゃ嬉しい!」



「悠君がんばって!」



「まかせろ。でももう当分夜遊びは禁止だから。わかった?」



「そんなの当たり前じゃん!」



「やけにものわかりいいな」



悠君が働いてるのに遊びになんて行けるわけがない!



「じゃ、部屋入りなよ。灯りがついたの確認したら俺行くから」



そう言いながらも、悠君は私の手を離そうとしなかった。
なんだか胸がぎゅっとなる。



「ねぇ悠君、早く帰ってきてね?」



私だってこの手を離したくないんだよ。



「あの……甘すぎて腰が砕けそーなんだけど。どんだけツンデレ?」



「いやあのっ、そんなつもりじゃなかったんだけど……」



なにうっかり大胆なこと言ってんだろ。恥ずかしくて死にそう。



「ほら、行って。このまま連れ去りたくなっちゃうから」



「ん、わかった」



繋いでいた手を、離そうとしたんだけど。



「待って」



今まで見たことのない切ない顔をした悠君が、そのまま私の手首を掴んだ。



「悠君?どうしたの?」



悠君は何も言わないで、ぎゅっと強く私を抱きしめた。



「……ちょっとだけこうしてて?」



強く優しく私を抱きしめたまま耳元に頬を寄せて
悠君は「大好き」って囁いた。
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