わたしのキャラメル王子様
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「た~ての糸はフンフンフ~ン、よ~この糸はフンフンフ~ン♪」
放課後、部活もそっちのけで病院に来たら悠君がいるはずの病室からなぜか女の人の歌声がしてる。
「あの……」
部屋の名札は確認したし
……部屋、間違えてないよね?
「あらっ、もしかして悠介君の彼女さんかしら?」
こそっと覗いたドアの向こうにいた、恰幅のいい年配の看護師さんと目があった。パイプ椅子に腰かけて、まるい膝の上で、刺繍糸みたいなのをあみあみしている。
「悠介なら今診察に行ってるよ?って、えっ彼女来たの?」
「ど、どうもこんにちは」
同室の男性にも声をかけられ、状況が掴めなくてしどろもどろになってしまった。
「悠介君すぐ帰ってくるから、そんなとこ突っ立ってないでこっち来なさい。ほら」
「あっ、ありがとうございます」
看護師さんに椅子を勧められて、ぺこりと固いお辞儀をした。