わたしのキャラメル王子様
「でも身長もまた伸びてて」



悠君が悲しそうにうなだれてる意味もわからない。



「ねぇ私、別に背の低い太っちょがタイプなわけじゃな……」



「……ショックすぎ」



「おまえ今何センチあんの?」



「……牛乳飲まないようにしてたのに180越えてた。部活でやたら筋肉ついちゃうし、遠近法じゃ沙羅が遠いし……好きな人の理想に近づけないなんて切ない」



「はぁ?それ嫌味だろ、腹立つな、贅沢だわ!」



「いや、だから私は!!」



「テメーこのやろ、5センチ寄越せ!足が長すぎんだろむかつくなぁ!」



……やっぱり私の主張は流される運命。



「織り成す糸は~いつかフンフンフンフ~ン~♪あたためうるかもぉ~♪ねぇ、なんだかんだ仕事の合間に6本編んじゃった」



師長さんはマイペースにあみあみを続けてるし。



「あれ?それもしかして……俺が寝てる間にやっててくれたの?」



悠君は驚いてるけど嬉しそう。



「ポケットからはみ出てた感じが、なんとなく急いでそうだったからね」



師長さんと大沢さんが目を合わせた。



「わ~二人ともありがとう!カラーリングのセンス抜群じゃん。師長さんのその歌もなんかすき〜」



鼻高々の師長さんの説明によると、愛を歌った数ある名曲の中でも群を抜く名曲らしい。



その話を興味津々で聞き入ってる悠君が、私にはまぶしくて仕方ない。



1日しかここにいないのに。そのほとんどを眠って過ごしたはずなのに。



何も言わなくてもしなくても、周りを自分のペースに巻き込んじゃうんだ彼は。



それってもう『魅力』を追い越して『魔力』みたいに思えてくる。



私はもうずっとそれに翻弄されっぱなしなんだ。



ほんとうを言えば小さい頃から悠君の世界に溺れっぱなし。
悠君のいる世界がすき。
悠君がすき。
ううん、大好き。


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