わたしのキャラメル王子様
隣同士。
黙々とあみつづけていたら、窓の外にはオレンジ色の空が広がっていた。



その色は窓越しに部屋の中さえ染めて、暖色の光が私達の手元を照らしていた。



遠くで犬の遠吠えと、すぐそこを車やバイクが通りすぎる音や子供達の声まではっきり聞こえて、どんどん色を変えていく空をぼんやり見ていたら、いつの間にか夏が終わってしまっていることにふと気がついた。



自分だけがずっと昨日に取り残されていたような気がして、戸惑って、胸がざわめいた。



「ちょっとだけ待っててね、急いで戻ってくるからさ」



ぽつりと悠君がつぶやいた。



「山のなかにテニスボール取りにいく感覚で言わないで」



あの時、たったの5分すらとんでもなく不安だった。
長かった。
それなのに、もっともっとずっと遠くに悠君が行ってしまうなんて思いたくない。



「でも探し物以上のもの持って帰ってくるよ俺。出来る子だもん」



確かにあのとき悠君はテニスボールを三個も探して戻ってきてくれた。でも今は、何もいらないからどこにも行かないでって気持ちでいっぱい。



「お父さんの跡継ぐんだよね、フィアンセがいるって言ってたけど、それって家同士が決めたものなの?」



私達、どうなるの?って
戻ってなんかこれなくなるんじゃない?って、怖くて聞けるわけがない。



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