わたしのキャラメル王子様
「そうそう。そっちのがメインで、ピアノの方はどうしてもまとまったお金が必要だったから……終電までの時間でなんかできないかなって探してて。後輩にゆすられることになるなんて思いもしなかったけど」



びっくりしすぎてぽかんとしてしまった。



「悠君て意外としっかりしてるんだ?」



「どうかな~、そういうことがあったから逆にちゃんとしなきゃって思っただけだよ。一人で編入手続きとか、かなりめんどーだったけど、結果いろいろ勉強になってるし。それもすべて親への意思表示になってるはず、って思ったら頑張れたしさ」



「意思表示?」



お互いに手が自然と止まった。



「会社を継ぐ意志はちゃんとあるし、経営のためのノウハウや基盤を固めるためにちゃんとあっちの大学に入って卒業するつもりでいるって。現場で経験を積んで、次期経営者として親に安心してもらわないと。つまりそれが政略結婚なんか持ち出さなくても不安材料なんか何にもないっていう何よりの確約になるんだよ」



「悠君、どうしたの?賢い人みたい!」



正直、びっくりした。



「思うように人生を切り開いていくためには賢くなきゃダメなんだよ。じゃなきゃ大人に足元すくわれるんだもん。結婚相手くらい自分で決めるのが普通でしょ」



そんな大人っぽいこと言う悠君が、やけに遠い存在に思えてきた。それなのに、いつもと変わらないふわふわな笑顔は、やっぱり私の心を掴んで離さないんだ。

< 125 / 156 >

この作品をシェア

pagetop