わたしのキャラメル王子様
「だからお仕事しながら夜中は勉強しなきゃいけなかったんだ」



咲田さんが言ってたもん。
パソコンとにらめっこしてるって



「うん、だってあっち行ったって授業内容がわかんないと意味ないじゃん。日常会話ならともかく、専門用語がバンバン飛び交うからすぐ置いてけぼりくらうし。俺実は英語すげー苦手なの。スペルとか全然覚えられないし。しかも経済学とか何?って感じだし。飲み込み悪いからもう大変」



ため息をつく横顔をちらりと見た。
その言葉のわりには大変なそぶりなんか、悠君は少しも見せなかった。



「ろくに寝てなかったんでしょう?だから病院に行く羽目になったんだもんね。それなのに人助けまでしてるんだもん。悠君すごいや」



見た目だけじゃなくて、中身までイケメンなんてずるいよ。



「えっ、あれ見てたの?だってあのお母さん、泣きそうな顔してたんだよね。だからほっとけなくて……にしてもなんか恥ずいね」



えへへって、そんな無邪気な顔、見せないで。



「あの人、今朝のこと一生忘れないと思うよ」



本心だった。絶対そうだと思った。



「んな、大袈裟だよ」



「そんなことないよ」



もう悠君の顔を見れそうにない。
ぎゅっと、膝を抱えるしかできない。



「あかちゃんてすげーかわいいの。ぱんっぱんでまんまるで、ふっくふくなの。でも子供連れてあの荷物はないよ、世のお母さんってこれが普通なのかってびっくりして。すげー無理してんじゃんって思って。じゃあ男子の出番だなって」



「だね」



少しだけ、空気が和らいだ。



「あの時思ったんだ、女の人ってか弱いんだなって」



大きなあったかい手が、頭をぽんぽんしてくれた。



「だから沙羅のことは、俺の手でちゃんと守ってあげなきゃって、すげー思ったの」



すごく切なくて嬉しくて
涙があふれそうになってしまった。

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