わたしのキャラメル王子様
「いろいろこまごま説明したけどさ、一番言いたいことは何かってちゃんと伝わってる?」



悠君は少し不安そうに私の頭を撫でてくれた。




「わかってるよ、今回の帰省は今までのとは違うんだよね。なんか今までよりうんと悠君が遠くに行っちゃう気がする……一人で先に大人になっちゃうみたいで」




「大人になることを強要されるより、大人になることを自分で選択した方がいいじゃん」




「そういうのがさ、まだまだ子供でいたい私を置いてけぼりにするんだよ」




「置いてけぼりになんかしないよ。沙羅のそばにずっといたいから行くんだし」




何やってんだろう、私。
悠君を困らせたいわけじゃないのに。




「ねぇ沙羅~!」



そのとき階下からママが私を呼ぶ声がした。



「はぁーい、なに?」



よかった。いつものママの声で、涙が引っ込んだ。




「ママ病院に忘れ物しちゃってるみたいなの、取りに行ってくるからご飯の続きやっといてくれない?」



「もー、しょうがないなぁ。とりあえずわかったー」




ドアを開けてやる気なく返事した。




「ちょっと休憩しよっか、下のことしなきゃ。アイス食べようよ」



空気重くなっちゃったし、ちょうどよかった。ママに感謝だな。



「ピノ1個あげるから悠君は私に雪見だいふく2個ちょうだいね」



「それじゃ俺の雪見だいふくなくなるじゃん!」




「いろいろ秘密にしてきたお仕置きだもんね」




何もかもがいつも通りなのは
きっと悠君の優しさなんだ。
そう思ったら胸が苦しい。



悠君が私を想ってくれてるって、どんな甘い言葉より強く伝わってくるから。だから私も普段通りにしようって、泣いたりするもんかって、今心に決めた。
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