わたしのキャラメル王子様
「なにこれ……」



「見たまんま指輪だけど」



「ほんとだ、指輪だね」



目に写るものを声にしてみただけ。棒読み。



「オモチャじゃないからね」



悠君の目はすごく真剣だった。



……10年前。薬指。指輪。
じわじわと、今ごろになって思考が追い付いた。



「あの、もしかして鬼退治したあのときのこと言ってたりする?」



「そう、節分。バレンタインでもホワイトデーでもないところがなんか硬派でいいよね。沙羅もちゃんと覚えてたんだ」



悠君はくすぐったそうに、照れて微笑んでるけど、私は泡を吹いて倒れそうになるのをこらえてる。



「だからさ、俺にちょうだい。沙羅が俺のお嫁さんになるって約束。これはその約束のしるしで、あと悪い虫がつかないように。えーっと、受け取ってもらえるとよいのですが……」



赤くなって、かちんこちんに固まっちゃってる。
悠君がうろたえたり、戸惑ったりするときのヘンテコな日本語を、久しぶりに聞いた。



「いい男になって、沙羅の理想の王子様になってちゃんと迎えにいくから。今度鬼が来たら俺が沙羅を守るから。子供の頃からずっと、俺の結婚相手は沙羅だけって勝手に思ってたし!」



「あの……じゃあ、フィアンセがいるって言ってたのってもしかして」



「もちろん沙羅のことだけど?」



あまりに悠君ワールド全開で、もう腰が抜けそう。


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