わたしのキャラメル王子様
「けしかけたんだよ俺。彼女も案外待ってたりするもんだよって。でも頑として聞かないから、なんで?って聞いたらその理由がさ」
「その理由が?」
パフェのてっぺんの生クリームが、アイスのうえをなめらかに滑ってくずれた。
「王子様だからなんだって」
「え!」
「俺は沙羅の王子様だからって言ってた。すんごい真面目に」
「キャー!!!」
盛り上がってるのは二人だけで、私は顔をまっかにしたままひたすら固まった。
「不安だから一人にはできないし、かといって泊まるのはルール違反な気がするし……って葛藤してたみたいよ。でも寝顔見てたら誘惑に負けたんだって」
「誘惑って……へ?」
「で、隣に潜り込んじゃったものの、大事に思えば思うほど手なんか出せるわけないって気がついたらしくて、いろいろ修行だと思ってこっちはすげー耐えてるんです!って俺に八つ当たりすんだもんあいつ」
「え……ええっ!?」
大沢さんと京ちゃんは悠君のことを「かわいい」だの「アホすぎ」だの「ピュアにもほどがある」だの好き放題言いながら盛り上がっている。
驚きのあまり凝固しちゃってる私を無視して。
「ねーねー、沙羅と佐野君の結婚式には呼んでくれるよね?あっちで式挙げるなら、私これから旅費稼がなくちゃ」
「俺も呼んでよ?できれば式はこっちで挙げてさ、赤ん坊は師長の安井さんが案外取り上げたりしてね~」
「やだぁ、楽しみすぎるっ!」
「いやぁ、あいつバイク何に乗るのかなぁ?今年のカタログも見せてやりたいなぁ~」
「ちょっと二人とも気が早すぎるって!」
照れくさいのか、嬉しいのか、恥ずかしいのか……まったく悠君はどこまで私を振り回せば気がすむんだろう。
でも、悠君。
なんだかんだ私今、すごくうれしいかも。
しあわせかも。