わたしのキャラメル王子様
「ママってたぶん可愛い我が子を谷底へ突き落とすライオンタイプなのね。寅年だから?」
「干支なんか関係ないって〜」
泣いてもすがってもママは行くに決まってる。でも受験勉強は孤独だよ?
悠君に会うことも叶わない私にとっては孤独の二乗……それも最後の追い込みなのに!
悠君に泣きついて愚痴を聞いてもらっても、乗り切れる自信がない。
「それでいつ頃帰ってこれるの?」
「それはパパ次第かな」
もしかして、ぼっちで年越しかもしれない。でも裏を返せばパパがぼっちになるってことだから、それはそれで心が痛い。
「……わかった。ちゃんとご飯食べて早寝早起きして、風邪ひかないようにしてぜったい合格してみせるもん。春には幸せ掴んでやるもん。パパにお大事にって伝えてね、グスッ」
「あんたもしかして泣いてんの?」
「泣いてないよぉ〜、泣いてないけどさぁ」
自信がなくても決意表明しないと。
いつか『願い事は口にしなきゃダメなんだよ』って悠君が教えてくれたから。
そうでもしないと乗り切れそうにない。それがたとえ強がりだとしても、ぼっちを突きつけられる日々を越えるには未来で笑っている自分を想像するしかない。
悠君だって、向こうで頑張ってる。しんどいのは一緒だって唇を噛みしめた。
「なんか気合い入ってるとこ申し訳ないんだけど、一人で頑張れなんて誰も言ってないよ?」
「はい?」
どういう意味でしょうか。
「共に人生の岐路に立つべくあっちから逆受験生がくるから。ホームステイってやつよ」
「は?」
耳を疑った。自分のことで精一杯なのに海外の人を迎え入れることになるわけ?
「こっちの大学を受けるんですって。目標が同じなんだからお互い切磋琢磨できるでしょ」
「いやいやいや!なんでそんなこと勝手に決めるの相談くらいしてよ」
「ごめーん。パパのことで頭がいっぱいだった」
て。そんな軽くですませるな!
「ちょっと待って、いっかい落ち着く」
よし、冷静になろう。
いや深呼吸してもやっぱ無理。人生そんなに極めてないもん。
「部屋も空いてるしルームシェアみたいなもんだから気にしなさんな。でも時には励まし合って支えあって、とにかく受験を乗り切るのよ!オンライン面談したけど おっとりした賢い子だからいい刺激になると思うのよね」
その面談に私もまぜなよって突っかかったら「あんたは勉強とバイトで病んでたから相手の心象が悪くなると思った」って。
それシンプルに悪口だよ。
でも少しほっとした。面談できたってことはたぶん意志疎通はどうにかなる。
課題はお互いのコミュ力?
そうなると京ちゃんに間に入っててもらえれば早い。なんか緊張してきたな、冬休み頃になるのかな。