わたしのキャラメル王子様
その翌日の昼休み、京ちゃんも一緒に3人でお昼を食べながら悠君は真顔でこう言った。




「俺泊まるのは無理だよ」




荷物持ち込んでいい?とか、
一緒にお風呂に入ってもいい?
なんて、いつものようにふざけてベタベタしてくるものとばっかり思って応戦する気マンマンだったのに、まるでその構えは無駄だった。



「なら京ちゃん泊まりにきてよ!」



「いいよー、週末とかなら全然OK」



「えっ、週末オンリー?平日ダメ?」



不安丸出しで京ちゃんにはすり寄ってしまった。


「そんなに心細いんならもう平日は佐野君に甘えちゃえば?沙羅ってほんとめんどくさいとこあるよね」



「めんどくさいって……ひどい」



京ちゃんは思ったことをすぐ口にする素直ないい子なんです。私も自分のことをめんどくさー!って思うこと多々あるし。



「ね、佐野君。沙羅が実は寂しがり屋で甘えん坊って知ってるでしょ?」



「いやいや私は自立した大人女子を目指してるってば!」



京ちゃんには私がそんなふうに見えていたんだろうか。
てか私って……そうなの?



「沙羅の力にはなってあげたいけど泊まるのは無理なんだって。けど連日パーティーはしたいね」



「なにふざけてんの、悠君のアホ!」



彼の脳内はやっぱアメリカンなんだ。



いや、それはいいとして。
悠君が泊まらないと言って譲らないのはなんでだろう。
なんか、すごく気になる。



「でも今日は沙羅の一人暮らし記念に俺クッキー焼いてあげるね♪」



「……あんたはステラおばさんか?」



「ごめん、あそこまで上手には焼けない」



「つっこんでんのはそこじゃないよ!」



そんな私達を見て、京ちゃんはいつものように一人だけ大人びた表情でぽつりと呟いた。



「なんかふたりっていつも息ばっちりだねっ」



ふふふ、と余裕のある微笑みをたたえて。



「やっぱりそう思う?だって俺たち幼なじみだもん。ね、沙羅?」



「え?あぁ、うん」



幼なじみ。かぁ。
その言葉が胸に突き刺さる。痛い。



「あっ、そーいえばさぁ。佐野君告られたんだってね?」



「ぎやぁぁぁ、京ちゃんそれはっ!」



いきなりの話題転換にも驚いたけど、テーマがそれなの?


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