わたしのキャラメル王子様
悠君はもうキッチンでお米を研ぎはじめていた。
どこまでマイペースなやつなんだ。
人の気も知らないで。



「ねぇ、なんでお米の在りかなんて知ってるの?」



よっぽど不思議顔をしてたのか、悠君はポケットから紙を一枚取り出して、冷蔵庫にマグネットで貼りつけた。



「このうちの備品事情は沙羅ママからだいたい聞いた、ほら」



「えーっ、家の間取りじゃん!」



余白に、何がどこにあるかがみっちり書いてあった。



「沙羅のことがよっぽど心配なんじゃない?俺に頼るくらいだもん。印がついたところは入ったり触ったりしないでってこと?」



「……ぽいね」



「ちゃんと守るから安心していいよ」



「う、うん」



私の部屋に印は付いて……。



「ない!私の部屋に印ついてないじゃん。なんで?」



「しょっちゅう出入りしてるからだろ?」



「それはそうだけど……」



「沙羅が困るんなら入らないから」



「え?」



なんか変だ。
こういう時、悠君はいつもふざけるのに。
こうやって、こんなふうに、悠君は私の気持ちをかきみだす。

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