わたしのキャラメル王子様
「そういう子供っぽいの、もうやめようよ。私達もう高校生なんだし」



そう言い返したら悠君は顔を上げて、私に向き直った。



「沙羅には俺が子供に見えてんだ?」



そんなわけないじゃん。
逆だからおろおろするんじゃん!



でも確かに膨れっ面だけは、小さい頃から変わらないかも。
だからこう言ってやった。



「うん。やることにデリカシーないし」



平静を装って立ち上がると鞄を手に取った。
もうこれ以上悠君に振り回されたくないし、無駄にドキドキしたくない。



ふたりきりの空間ってだけでも変に意識してしまう。
もう耐えられないから早く下に降りちゃおう。



「俺には沙羅の方が子供に見えるけどなぁ」



思いがけず並んで隣に立つと、
まざまざと見せつけられる身長差。




わたしの目線の高さには悠君の胸がある。
着崩した制服からのぞく、
男の子らしい首のラインや
なめらかなカーブの喉仏。



ほんとは知ってるんだ。
広い肩幅も、いつの間にか逞しくなっちゃった胸元も。
ほんとは意識しちゃって仕方ないの。



小さくてふわふわの男の子じゃなくなってしまった悠君のまえで、どんなふうに振る舞ったらいいか全然わからない。



いつも、戸惑って
ひとりだけあたふたして。
1人で勝手にうろたえて……。
隣で君の顔を見上げられたことなんかない。

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