わたしのキャラメル王子様
「悠君あのね、私Mフェス見たいの」



勇気を出してTシャツを着た悠君の腕を掴んだ。



「それならもう始まるよ?」



「お風呂にも入りたいの!」



「入りなよ。ん?」



怖いからお風呂に一緒に入ってとお願いするのはどう考えても無理だし、でも部活でベタベタの汗は流したいし、シャンプーするときの背後は怖いし、でも山下当麻(やましたとうま)君が歌うの見たいし……。



一人でお風呂に入るのが怖いんだと知られるのもなんか微妙に恥ずかしい。あぁもうどうすればいいの!



葛藤に苦しむ私をじーっと見ていた悠君は、無言で私を引っ張った。



「ここで待ってるから、行っといで」



浴室のドアの脇に座り込んでスマホをいじりだした。
もしかして私の気持ち、わかってくれたの?



「えーと、一曲目がchoiceで二曲目が東野マナで三曲目が山下当麻で四曲目が……」



「悠君、2分!2分で出るから!」



「それほんとに女子の発言?」



悠君が笑ってくれたから、さっきの恐怖感がだいぶ和らいだ。
心のなかで悠君ありがとう、やっぱり大好きって叫んで、意を決してシャワーを浴びた。



悠君の優しさを無駄にはしない!当麻君に間に合わせて見せる!
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