わたしのキャラメル王子様

「悠君……」



ドアの隙間から顔を出した。



「やっぱ2分は無理だったか。でもまだ二曲目だよ、ほら」



悠君のスマホを見ると当麻君はもう前列に移動してた。どうにかして彼が歌うのを大きな画面で見たかった。



「で、なんで出てこないの」



「それが……」



あぁ、持って生まれたズボラが災いした。
普段から恥じらいをもって女の子らしくしておけばよかった。ママにも注意されてたもんね。



ママと二人の生活が長かったから、平気でバスタオル1枚を体に巻いて浴室と自分の部屋を行き来していたわけで。



「うぅ……着替え持ち込むの忘れちゃった……」



「……マジ?」



「マジなの」



「じゃ、俺リビング行っとくからさ」



「やだよ、二階真っ暗だもん!行けないよ!ひとりにしないでお願い悠君!!」



「もう……沙羅ってこんなに世話の焼ける子だったっけ?」



悠君は立ち上がってわざと大きなため息をつくと、着ていたTシャツを脱ぎ始めた。



「はい。おちびさんの沙羅なら膝丈くらいはあるでしょ?」



こっちも見ずに、ドアの隙間にそれを差し出した。
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