わたしのキャラメル王子様
「なんか秘密基地思いださない?」



「わ、あったね。懐かしい」



小さい頃の思い出がふわっとよみがえって、さっきまでの不安をさらっていった。



隣にいる悠君の体温が疲れた身体にしみてきて、すぐに眠気がやってきた。



「特別に手、握ってもいいよ?」



「いっ、いいよ!もう怖くないし、子供じゃないんだから」



戸惑っていると、悠君が手を差し出してきた。



「強がらないの。ほら」



返事を待たないで、悠君は私の手を取った。
毛布のなかで私達今、手をつないでる。
そう思ったら、胸がぎゅっとなった。



「あれ?拒否られると思ったのに。俺の恋、一歩前進したっぽい?」



「もう、大袈裟だってば」



手をつないだのはいつぶりだろう。
当たり前だけど、悠君の手は私の知らない手だった。



それは、よく覚えているちっちゃくてふわふわの男の子の手じゃなくて……すべてを包み込んでくれるような、頼もしい手だった。



すらりとキレイな指。
あったかくて大きな手のひらがぎゅっと私の手を握りしめた。



ドキドキする。
安心する。
……やっぱり、ドキドキする。



毛布の中のふたりの体温と雨音が、心地いい睡魔を連れてきた。悠君のキャラメル色の髪から、私と同じシャンプーの匂いがした。



やっぱりあの子に取られたくない。
誰にも、取られたくない。
情けないことに、これってやきもち以外の何物でもないや。



身体がぽかぽかして、あったかい。気持ちいい。



「ほら、ここ」



もうひとつの手が、私の頭を優しく傾けてくれた。
こてん、と。
逆らえずにそのまま。
悠君の胸を枕にしちゃうなんて、もうすでに夢のなかなのかな?


「ちゃんと俺の夢見てね、おやすみ」



眠りに落ちる間際、優しく頭を撫でられて
悠君の優しい声が聞こえた気がした。

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